受賞の言葉(2022年度・学科賞)|吉田奈央
吉田奈央(Yoshida Nao)
この度は、学科賞に選出していただきありがとうございました。
本作品は、環境によって状態が変化する、氷を用いたサウンドアート作品です。
大学生になり、制作物に対して様々な意見を受ける中、自分自身の在り方について悩み、作品に人間性を含ませたくないと考えるようになりました。そんな時、ジョン・ケージの偶然性の音楽や、環境音楽という概念に出会いました。研究を行う中で、偶然性を用いても人間性を完全に排除することはできないと結論づけましたが、その場まで結果が分からないという不確定性の面白さに注目し、氷を用いてサウンドを環境に委ねることで、偶然性を表現しました。鑑賞する環境や時間などによって作品が変化するからこそ、興味を抱いていただけたのではないかと思います。
芸術工学部生として4年間を過ごす中、いろいろな事があったからこそ、今回の作品を制作することができました。どのような状況でも見守り、作品制作に協力してくださった周りの方々、指導教員の水野先生に心より感謝いたします。
水野みか子
創作のコンセプトや形態に関するアイデアから、実際に制作するための素材選び、試作、仕上げの段階に至るまで、粘り強く追求していったと思います。ジョン・ケージの思想を注意深く学び、その研究から得たことを自分自身の中で噛みしめて、独自の方法で制作に持ち込み、自らの手と頭で考えることで完成にまでこぎつけました。研究や制作の途中経過も細やかに報告してくれたので、何につまづき、何を悩んでいるかがよくわかりました。中間発表のあとも気をぬかずに進めたことで、充実した制作期間が確保できたと思います。
吉田奈央|ジョン・ケージの音楽によるエゴの排除とその批評に関する研究 / 自然物を用いたサウンドオブジェの制作