受賞の言葉(2020年度・学科賞)|杉山伶
杉山伶(Sugiyama Rei)
この度はimd学科賞および投票賞をいただけたこと、大変嬉しく思います。
本作品は、窓の外からのダイナミックな光の変化に包まれることで実空間でのバーチャル体験を可能にさせる、舞台照明技術を用いたインタラクティブアート作品です。
振り返ると大学3年生の頃、そろそろ卒業制作のアイデアをまとめ始めないといけないなと考えていた当時の私は、もともと観劇やコンサート鑑賞など舞台照明関連の作品が好きだったこともあり、卒業制作で舞台照明に純化した作品を作れないかとぼんやり思っていました。ただこれは完全に自分の趣味の分野であり、学部3年間で学んだことを活かせるのか、大学での学問としては少しかけ離れているのではないかと考えることがありました。
そんな中、指導教員の作間先生がこんなことを言ってくれました。
「若い時は、自分の信念を曲げず作品に愚直に向き合い、作りたいと思うものを突き詰めて作ることが大事で、評価はあとからついてくるものである」
その言葉通り先生は、やってみたいと思ったことを突き詰めることができる環境、知見を与えてくださいました。おかげでじっくり1年間かけて制作を進め、自分が満足いくまで完成度を高めることができたと思います。
はじめに「賞をいただけたこと大変嬉しく思います」と述べましたが、賞をもらえたことそのものが嬉しいのではなく、自分がやりたいことを踏み込んでやってみた結果、評価がもらえたことが嬉しいのです。
とても密度が濃く、有意義な1年をいい形で締めくくることができてよかったです。
春から舞台照明関連の職に就く私ですが、この研究室で学んだことを活かし、精進していこうと思います。
最後に、指導教員の作間先生、作品制作に協力してくれた周りの方々、そして僕の作品を鑑賞してくださった全ての皆さんに厚く御礼申し上げ、感謝する次第です。
杉山伶|舞台照明技術を用いた空間演出の研究と制作 / 地球儀
imd学科賞 2020年度
作間敏宏
杉山君、学科賞おめでとうございます。
杉山君の受賞は、何かに強い興味をもつこと、それについてたゆまず考え続けること、同時にコツコツと手を動かし続けることが大きな力になるということを、あらためてわれわれに示してくれたと思います。
杉山君が、舞台美術、なかでも舞台照明への傾倒とそこでの思考をどうやってインスタレーションアートの形式に組み立て直していくのか、はじめのうちそのイメージを摑まえることが僕にはできませんでした。両者は一見似ていますが、似ていればこそ差異が際立ち、乗り越えがたさが襲ってくるように思えたからです。杉山君が「地球儀」という着想と思考実験とにより、舞台照明の演出技法を自在な空間移動のメチエに転換したときに、杉山君が見ていたものにやっと僕も追いつくことができました。インスタレーション空間の《今=ここ》が、地図で指示した地球上のあらゆる《今=ここ》に瞬時に接続される目眩のような感覚──それは、空間内のコスモポリタンな道具立ての作り込みによってしっかり支えられてもいました。
僕としては何も役に立てなかったことに恥じ入るばかりですが、つまりは杉山君がこの快作をほとんど自力で着地させたということ、そのことを誇りに思います。舞台照明の仕事と並行して、今回の達成をさらにすすめることを願っています。
杉山伶|舞台照明技術を用いた空間演出の研究と制作 / 地球儀
imd学科賞 2020年度