受賞の言葉(2020年度・学科賞)|今井健人

今井健人(Imai Kento)

 この度は、2020年度「imd学科賞」という名誉ある賞を頂戴し、光栄に思います。これもコロナ禍にも関わらずこの1年間毎日のように研究・制作のアイデアや方針、実装技術などの様々なサポートを丁寧かつ熱心なご指導をしてくださった小鷹先生、多くのご意見を頂戴し様々な面でお手伝いしていただいた研究室のメンバーや周りの方々のおかげです。心から感謝と御礼を申し上げます。

 本研究・制作は、「ハーフミラーって面白そうだよね」という小鷹先生の思いつきのような一言から始まりました。ハーフミラーは、両面での明暗差によって透過と反射という特有の性質を持つ鏡のため、 研究当初は扱い方や作業環境の構築など手探りの状態で先行きが見えず、苦戦する日々が続きました。しかし、先行きが見えないからこそ「〇〇したらどうなるかな/〇〇使ってみるのいいかも」と夢中になって毎日試行錯誤を続けた結果、早い段階で「身体像の透視」という既存の錯覚研究では取り扱われていない未知なる体験を発見することができ、最終的に完成度が高く強力な錯覚体験を得られる2つのインタラクティブアート作品を制作することができたと思います。

 この1年間は、試行錯誤の過程で起こる想像もしていない/できないことが非常に刺激的であり、研究・制作に没頭し、有意義で烏飛兎走の1年間でした。また、主体的に自身の興味関心を突き詰め、全体を通して研究・制作の楽しさを知ることができました。今後は博士前期課程に進学し、この卒業研究をさらに追求するとともに新たな作品を制作していく予定です。今回の受賞を励みに、これからも研究・制作に尽力していきたいと思います。


今井健人|ハーフミラー環境における身体像の透視に関する研究・制作
imd学科賞 2020年度

小鷹研理

個人的に、この4月に卒業するimdの第6期生(2017年度入学)には、4年間を通して、多いに楽しませてもらった。美大とも工学部とも違う、imd独特のスペクトルの中で、制作・演習を通じて各人に(それぞれに少しずつ違う)固有の持ち味を磨き、最後の卒研でも全体として魅力ある作品が数多く生み出されることになった。他のどの大学とも違う、imdの一つの理想形を、この学年の集団の中に見た思いがする。今後、僕の中では「この学年を越える卒業生を送り出すことができるか」というのが、一つの目標となるだろう。今回、学科賞に選ばれなかった学生も、多いに自信を持って卒業していってほしい。

さて、今井くんの卒業研究・制作は、そんな数々の秀作の中でも、半ば突き抜けた存在感を持った、圧倒的な快作だったと思う。説明するのも野暮なので、ぜひ映像を見てほしい。僕が持ち上げるまでもなく、XRAYSCOPEによる新しいプラットフォームの発見は、単に「おもしろい」ということを超えて、心理学や脳科学などの学術的な視野で決定的に重要な仕事であることはまちがいない。世界が今井くんの発見の重要性に気づくのも時間の問題だと思っている。

(あまり大きな声では言えないが)11月下旬にナディアパークで開催された研究室展示(注文の多い「からだの錯覚」の研究室展)において、今井くんの展示室には体験者が多数集結し、コロナ第二波の真っ只中でありながら、多くの時間帯で極めて密な状態となっていた。三日間の展示が終わった後、今井くんから、150人分もの体験アンケートを回収したと聞いた時には、さすがにたまげるしかなかった。そのアンケートでは、80%以上の体験者が自分の手の透視感覚を強く覚えると解答している。この数字はもちろん重要だが、この錯覚体験の価値は、この数字では測り切れないところにある。実際、この錯覚は、「自分」の地底の奥深くにある足場がダイレクトに揺すられるような、ある種の<やばさ>が漂っている。この<やばさ>は、使い方次第で、毒にも薬にもなるだろう。毒づくばかりがいいというわけではないが、薬(としての応用)に徹するという必要も全くない。これからの大学院の二年間、今井くんには、ときに呪術家として、ときに治療家として、この新しく発見したばかりの錯覚をさらに遊び倒してほしいと思う。

学科賞おめでとう。


今井健人|ハーフミラー環境における身体像の透視に関する研究・制作
imd学科賞 2020年度


>> 概要 [PDF]

>> 作品映像1 [YOUTUBE]|”XRAYSCOPE”

(Nominated for Top 10 in Best Illusion of the Year Contest 2020 [コンテスト映像])

>> 作品映像2 [YOUTUBE]|”ボディジェクト闘争”


>> 関連展示 [WEB]|注文の多い「からだの錯覚」の研究室展, 2020.11.27-29

+ 展示映像1 [VIMEO]|”XRAYSCOPE|EXHIBITION HIGHLIGHT”

+ 展示映像2 [VIMEO]|”ボディジェクト闘争|EXHIBITION HIGHLIGHT”


今井健人|ハーフミラー環境における身体像の透視に関する研究・制作
imd学科賞 2020年度