受賞の言葉(2025年度・学科賞)|林純礼
この度は学科賞に選出していただき、誠にありがとうございます。
本作品は、手指の形に合わせて生成される別世界への「窓」を通じて、別世界を眺め、世界の「あわい」を経て、複数の世界を往来するXR体験です。
幼少期に、手指や筒状に丸めた紙で切り取った形の向こう側に、別の世界が見えたらと想像していました。このささやかなファンタジーをMRによって再現できるのではないかと考えたことが本制作の始まりです。
制作の過程では、方向性や技術面で迷ったり行き詰まったりすることもありましたが、多くのご支援をいただきながら模索を続けました。最終的に作品として形にすることができたこと、内覧会や制作ブリーフィング、卒展にて体験者の皆様が驚いたり楽しんだりしてくださる姿を見られたことを幸せに思います。
今回このような評価をいただけたのは、日々ご指導・ご支援をしてくださった指導教員の中川先生、展示に際してご協力してくださった研究室の皆様、作品を体験し様々なご意見・ご感想をくださった皆様のおかげです。心より感謝申し上げます。
この度は情報環境デザイン学科の学科賞を受賞されたこと、心よりお祝い申し上げます。
林さんの研究・作品は、発想の段階から非常に独創的であり、体験者自身の身体、とりわけ手指の形態をインターフェースとして用いることで、別世界へと接続される「窓」を生成するという構造に大きな魅力がありました。XR作品において異世界への移行体験そのものはこれまでも多く見られますが、本研究制作では、手指の形状によって開かれる世界が変容し、さらに現実世界と別世界のあいだに生じる中間的な状態―“あわい”の領域―を積極的に設計しようとした点が特に秀逸であったと思います。この「あわい」を単なる遷移ではなく、体験の核として捉え直している点に、本作の新規性と深い思考が表れていると思います。
また、林さんが取り組んだシステムは、単なるツールの活用だけでは成立しない、空間構造・インタラクション設計・描画処理が密接に絡み合った高度なものでした。その複雑な構造を的確に理解し、さらに第三者にも伝わる形で図解化・言語化できていた点は、研究制作として非常に重要な資質であり、高く評価されるべき点です。
本作は、現実と仮想の関係性を単純に接続するのではなく、そのあいだに多層的な関係性を立ち上げることで、複合現実における表現の新たな広がりを示すものになったと思います。林さんの着眼点の鋭さと構造への粘り強いアプローチは、本研究制作全体を通して一貫しており、その積み重ねが本作の完成度の高さに結実していると感じています。
本研究制作で培った発想力と構造理解、そしてそれを他者に伝える力を、今後のさらなる挑戦へと繋げていってください。今後のご活躍を心より期待しています。