受賞の言葉(2025年度・学科賞)|藤江明香里
この度は「imd学科賞」という名誉ある賞に選出していただき、誠にありがとうございます。大変光栄に存じます。
私はこれまで約8年間、MCやナレーターなど声を用いた表現の活動をしてきました。そんな中で松宮先生の授業を受け、「話し声を素材とした音楽」に触れて、その表現の可能性に強く惹かれたことが本研究・制作の発端です。
テーマの方向性は早い段階で定まりましたが、当時の私は音楽に関する知識や経験がほとんどなく、制作の完成までには想定以上の時間と試行錯誤を要しました。制作が紆余曲折する中で、松宮先生には多大なご心配とご負担をおかけしたことと思います。それでも、迷い、つくり直し、検証する過程のすべてが糧となり、この作品に結実したと感じています。
本作は、AI音声が発達する現代において、身体を持たない声の価値を問いかける音響映像作品です。音楽に加え、私がこれまで培ってきた声による表現、手描きアニメーションといった要素を総合的に組み合わせて成立しています。今自分が全力で面白いと感じることを、現在の持てる手段を尽くして形にした作品なので、評価していただけたことを心から嬉しく思います。
最後に、手探りの段階から丁寧かつ熱心にご指導くださった松宮先生をはじめ、多くのご意見とご協力をくださった研究室の皆さま、制作を支えてくださった皆さま、そして作品をご覧くださり感想を寄せてくださった皆さまに、厚く御礼申し上げます。
今後は修士課程への進学を目指し、今回の受賞を励みに、研究・制作に一層邁進してまいります。
この度は、情報環境デザイン学科の学科賞を受賞されたことを心よりお祝い申し上げます。
藤江さんは、「スピーチミュージック」における声の音色に着目し、機械学習モデルRAVE を用いた音響変換によって、声と楽器音の関係を再構築するという独創的な研究と作品制作に取り組まれました。声の旋律構造を抽出し、楽器音へ置き換え、さらに再び声的音色へと還元する往還的なプロセスは、従来の作曲技法や音響表現に新たな視点をもたらす試みであり、技術的探究と芸術的感性の双方が高い水準で結びついています。
作品《奪われた声》では、「声が意味を失い、音色として変容していく」というコンセプトを、音響と映像の両面から段階的に構成し、聴く者に「声とは何か」「表現とは何か」を問い直す体験を提示されました。機械学習技術を単なるツールとしてではなく、創作思考そのものを拡張する装置として扱った点は、現代の AI・音響表現における重要な示唆を含んでいます。
ナレーターとして培われたプロフェッショナルな聴取能力を持ちながら、一方で音楽の基礎的なソルフェージュに課題を抱え、得意と不得意のあいだで苦悩しながら研究と創作に向き合う姿を間近で見てきました。その姿勢は、研究と創作の本来的なあり方を改めて考えさせるものでした。彼女の努力が実を結び、学科賞としてここに認められたことを大変誇りに思います。
今後も、これまでの成果を土台に、さらに新しい挑戦へと歩みを進めていかれることを期待しています。藤江さんの今後の一層の飛躍を心から応援しています。